CREATE COMMUNITIES

つながるひろがるACTION

地域で暮らす障がいのあるクリエイターを支援しようと、
2020年9月にnonowa国立で始まった「ものづくりのわ」。
駅内のスペースで、小物販売とワークショップを定期開催しています。
同年12月には、地域にちなんださまざまな商品を
国立駅の改札内で販売するという試み「もののわ」もスタート。
取り組み開始から約2年。ストーリーのあるさまざまな「もの」が、
地域の魅力の再発見と新たな出会いをもたらしています。

クリエイター、地域住民、駅社員がつながる
「ものづくりのわ」

「ものづくりのわ」は、障がいのあるクリエイターが製作した雑貨を扱うセレクトショップ「SOU」の代表・友田由香さんを企画に迎え、2020年にスタートしました。現在は中央線沿線の福祉施設にご参加いただき、nonowa国立で販売会やワークショップを不定期開催しています。
陶器の電車模型やつり革のキーホルダーなど、駅でのイベント用に製作されたアイテムが人気を集め、ものづくりを体験できるワークショップは親子連れを中心としたお客さまでにぎわいます。住民の理解と興味、そしてクリエイターの熱意がマッチした、まさに“この駅ならでは”のイベントです。

「ものづくり×障がい者支援」が地域特性にマッチ

中央線沿線の障がい者支援施設でつくられている雑貨は、質の高い一点ものであるにもかかわらず、お客さまとの接点が少なく知ってもらうチャンスがないという課題がありました。開催地にnonowa国立を選んだのは、過去に多摩エリアの作家が集まる「アートビュッフェ」を開催した経緯や、周辺に障がい者関連施設が多いことから、イベント主旨や販売する商品への理解があると考えたから。その狙い通り、商品の価値を理解して購入されるお客さまが多く、2年間の活動を経て認知度も着々とアップ。今ではすっかりnonowa国立の看板イベントとして定着しました。

ものづくりを介して「交流」を楽しむワークショップ

ワークショップではオリジナルのマスクづくりや葛のつるを使ったリースづくりなどが体験でき、クリエイターと参加者がゆっくり交流できる場として好評です。ものづくり体験自体はもちろん、サポートにあたっていた制服姿の駅社員の姿も子どもたちの人気の的に! 普段は話す機会のない駅社員と住民の方々がコミュニケーションをとる機会にもなり、障がいのあるクリエイターと地域住民との接点を作るだけにとどまらない、より大きな交流の輪が誕生しています。

輪が広がり、社員も取り組みを“自分ごと化”するように

nonowa国立での好評を受け、2022年はショッピングセンターのセレオやnonowa、グランデュオ立川、日本初の知的障害児者福祉施設・滝乃川学園で「出張 ものづくりのわ」を開催しました。また、販売会に訪れた国立市内で活動されていたパティシエ・小倉優太シェフ(現:株式会社vision Y 代表取締役社長兼オーナーシェフ)が「何か協力できないか」と声をかけ、滝乃川学園で製造する洋菓子のプロデュースが実現したという広がりも。
運営する駅社員たちも積極的にアイデアを出すようになり、「ものづくりのわ」を自分たちが育てているという意識がしっかり根付いています。現在は不定期での開催ですが、今後は常設の販売スポットの立ち上げやEC販売、駅を出た街中への進出など、より深い販売支援を目指していきます。

商品とその裏のストーリーを発掘して届ける「もののわ」

「ものづくりのわ」の開催後、お客さまからは継続販売を望む声が寄せられました。そうした中で新たに生まれたのが、駅社員が改札内で商品を販売する「もののわ」の企画です。
当初は「ものづくりのわ」関連の商品を扱っていましたが、次第に駅社員が自ら地域ゆかりのアイテムを探して販売するように。「地域PRの場」としての役割も担う、ユニークな取り組みへと進化しています。

駅の改札がお店になった!?

販売場所となるのは、駅の改札。駅構内のショーケースに商品を展示し、お客さまからの要望を受けて改札で駅社員が販売するという、他の駅ではなかなか見られないスタイルです。
駅社員は販売員であると同時にバイヤーでもあり、季節感や地域性を重視して取り扱い商品を自ら探します。思い入れがあるからか、売り方も思わず熱心に。電車の到着タイミングに合わせて商品PRのアナウンスをしたり、「なんだろう?」と目を引く凝ったディスプレイを用意したりと、積極的に「もののわ」をアピールしています。

ストーリーを伝えることで、地域への興味につなげる

「もののわ」が大切にしているのは、ストーリーのある商品を扱うことです。以前販売した「里帰りするあじさいリース」は、あきる野市の「南沢あじさい山」で作られたもの。1年後にリースを山に“里帰り”させて土に還すというもので、観光誘致になるうえ作り手のあたたかな思いが伝わります。メイクブラシ「MIRY」は国立市の都立第五商業高校の生徒が企画・開発したもので、コロナ禍で販売に苦戦しているという新聞記事を読んだ駅社員が学校へ直接連絡をして取り扱いが実現しました。駅員の古い制服をリメイクしたポーチやキーホルダーは、完売してしまうほどの人気商品。こうしたストーリーを丁寧に伝えることで、地域の魅力の再発見や出会いにつなげていきたいという思いがあります。

地域をもっと知りたい/知ってもらいたいから

駅業務をしながら商品販売に挑戦し始めた国立駅のメンバーたちは、「ものを売る難しさを実感している」と口を揃えます。事業として続ける以上、収益を上げることは不可欠。しかしそれ以上に、駅という場を活かしたPR効果や地域活性に共感し、商品を託してくれる作り手が多いのだそう。個人の興味や人のつながりをきっかけに次の販売アイデアが生まれることも多く、思いついたことを実行しやすいのは小規模事業者が多い地域密着型の取り組みならでは。「普段から地域のものによく目を向けるようになった」と駅社員自身が語るように、今後も社員一人ひとりが「もののわ」の一員となり、活動のさらなる活性化を目指していきます。

COMMENT 担当者より

お客様の声を、「ここにしかないくらし」の道標に

「もののわ」と「ものづくりのわ」の魅力の一つは、お客様の声を直接聞けることです。なぜこの商品を選んだのか、改札まで足を運んでくれたのか、その会話一つひとつが「ここにしかないくらし」の道標となると思います。また、地域の方々や作り手の皆さんなど、職場を超えて連帯する重要性も実感しています。今後も一致協力しながら成長し、「ここにしかないくらしをつくる」努力を続けていきます。(nonowa国立 阿部)

nonowa国立 阿部

nonowa国立 阿部

ここにしかないくらしをつくろう