JR東日本のグループ会社が運営しているのに、駅の中にも周辺にもない。
そんな一風変わった新拠点が、三鷹の住宅街に誕生しました。
その名も「ひとはこやカフェ」。
普通のカフェかと思ったら、実はそれだけにもとどまらなくて……?
既存のあたりまえを崩しながら、地域とともに未来をつくる、
新たな挑戦が始まっています。
「ひとはこやカフェ」は、JR中央線コミュニティデザインが掲げるマチナカステーション構想の具現化第一弾として、2023年3月にオープンしたカフェ型新拠点です。マチナカステーション構想とは、事業範囲を「駅(エキナカ)」という点に絞るのではなく、「街中(マチナカ)」へと拡張させていこうというJR中央線コミュニティデザイン独自の事業フレーム。今まで以上に地域に根差した新規事業を創出し、コミュニティを形成することが狙いです。
中央線の吉祥寺駅・三鷹駅から、井の頭公園を抜けてくてく歩くこと20分強。駅前とは打って変わって静かな住宅街の中に、「ひとはこやカフェ」は現れます。この場所に拠点を構えたのは、駅の利便性をあえて手放すことで、より地域に根差した課題やニーズを肌で感じられるようにするため。オープン前に決まっていたのは、お客さまが入りやすいカフェ形態にすることと、つながりを生むきっかけとして店内の本棚をスペース貸しするシェア型本屋にすることの2点だけ。その後の展開は、実際に地域の声を聞きながら模索していこう! そんな実験的なスタンスで始まりました。
住宅街にカフェができる、しかもJR東日本のグループ企業が運営しているという意外性から、オープン時は地元でちょっとした話題に。ただ、何もしなくても人が来る駅とは違い、ここではつながるための仕掛けが必要です。ご来店されたお客さまには社員から積極的に声をかけ、ときには店の外にも出ていき、まずは地域の方々とおしゃべりすることからつながりを築いていきました。するとわかったことは、思った以上に話をしたい地域の人が多いということ。そして、やりたいことはあるけれど、実現する方法がなくて困っている方がいらっしゃるということでした。
やりたいことはある、でも実現できていない人がいる——ならば、その夢を実現できる場所を提供しよう。事業形態を限定していないことを逆手に取り、「ひとはこやカフェ」ではカフェ業務に加え、お客さまが主役になったさまざまなイベントや企画を行うようになりました。気になるその中身とは……?
「ひとはこやカフェ」で開催されるイベントは実に多彩。プロのバリスタが出張でコーヒーを淹れに来たり、学生サークルのコーヒー飲み比べ会を開いたり、若手起業家の商品販売場所になったり、イラストレーターの方が個展を開催したり、食器の絵付けワークショップを開いたり……などなど、まだオープン1年未満とは思えない実行力です。「中央線コーヒーフェスティバル」や「プログラボ(子ども向けプログラミング教室)」などJR中央線コミュニティデザインが手掛ける他の事業でつながった方が、「ひとはこやカフェ」でもやりたい!と活動の場を広げることもあります。
そんなイベントの中でも特に象徴的だったのが、店内で開催したミニ縁日です。これはJR中央線コミュニティデザインの社員が地元の神社の宮司さんと会話する中から生まれたアイデア。輪投げやロボットゲーム、ヨーヨーなどを行い、悪天候にも関わらずたくさんの親子連れでにぎわいました。地域に昔からある神社とつながり、地域の課題を聞き出し、暮らす人たちの思い出になる企画を創り出す。マチカナステーションとしてのあるべき姿を再確認できたイベントでした。
スモールスタートで実験的に多様な企画を行う「ひとはこやカフェ」。今後は反響の大きかったイベントに的を絞ってさらにパワーアップさせるなど、事業としての精度を高めていくことも考えています。そして「地域の方々がやりたいことを実現できる場所になる」というコンセプトは維持しながら、実現した結果へのフィードバックなどを通じ、その先の展開を一緒に考えていけるようになることも大きな目標です。
答えのない事業だからこそ、地域の方々と一緒になり、いろんな可能性を広げていける。マチナカステーション構想によるコミュニティ共創を、JR中央線コミュニティデザインでは今後も積極的に進めていきます。
COMMENT 担当者より
共創を積み重ね、新たなコミュニティの在り方を模索したい
「何かやりたいことがある人が、まずはひとはこやカフェに相談して、私たちがアイデアを添えて、思いを遂げる……そんな共創を積み重ねた先に、新しいコミュニティや可能性が生まれると思います。次のステージを目指して、地域により深く入っていける存在になりたいですね」(写真左/大熊)
「若い人たちや学生さんが集まる仕掛けを作って、今よりさらに盛り上がる場所にしていきたい。いろんな人にとっての“居場所”になれたら理想的です」(写真中/袴田)
「『やってみたいけど場所がない』『一人では実現できるか不安』。そう思った時はぜひ『ひとはこやカフェ』にお越しください。皆さまのチャレンジを一緒に実現していきましょう。スタッフ一同お待ちしています。」(写真右/古田)
地域活性化部 大熊、袴田、古田