2024年4月、国立駅前に「nonowa国立SOUTH」が開業しました。
「地球と、地域と、身体に心地よい 『ソーシャルグッドリビング』」を
テーマにした、JR東日本グループ初の木造商業ビルです。
国立らしさを守り、地域の皆さまに受け入れられる
次世代型の商業施設をつくるために——
開発には、地域と未来に向けた熱い思いが込められています。
「nonowa国立SOUTH」は、JR東日本が保有する駅前用地の開発として、2020年から設計が始まった商業施設です。実はそれ以前も、この用地を活用するさまざまなアイデアが挙がっており、国立駅前の貴重な場所をどう使うべきなのか慎重な議論が進められてきました。そうした中、世の中のSDGs意識の高まりも後押しとなり、浮上したのが「サステナビリティ」をコンセプトにした商業施設の開発でした。
古くからの建物が残り、美しい並木道や富士山を望む通りがある国立市は、景観に対して高い意識を持つ地域です。商業施設の建設にあたり、まず前提となったのは街の風景と調和すること。そこで建物の構造に中高層木造建築の技術を導入し、木造4階建てとしました。この規模の木造商業施設はあまり前例がありません。外観はガラス張りですが、木の柱が透けて見えることで落ち着いた雰囲気に。国立のシンボルである旧国立駅舎(市指定の有形文化財)と並んでも、調和がとれるデザインにこだわりました。
木材をはじめとするサステナブル素材へのこだわりは、内装にも表れています。多摩産材の杉や、国立市内で伐採された桜の木、リサイクル材のレンガ調タイル、再生繊維を使ったバナーなどが随所に使われ、館内にほっとする心地よさをもたらしています。
なかでも注目したいのが、フロアサインに使われている国立の桜の木。会議の中で「国立の木が使えるといいね」というアイデアが上がってインターネットで調べたところ、たまたまその2週間後に国立市役所内の木が伐採されるとの情報を発見。すぐに市へ連絡して木の活用を相談、伐採当日は大雨の中社員も立ち合いトラックで高架下に運んだ…という裏話があるのです。その後、環境デザインを担当したデザイナーのアイデアで、プロジェクトに関わる担当者たちが手作りでサインを制作しました。
さらに「nonowa国立SOUTH」では、建物内で使用するエネルギーも風力由来の再生可能エネルギーを取り入れています。こうした取り組みに対しては、テナント企業も大きな関心を寄せており、立地条件だけでなくコンセプトに共感した企業やショップの誘致につながりました。
「nonowa国立SOUTH」では、再生可能エネルギーの発電・電力売買するための電力契約「PPA」を住友商事グループと共同で採用し、住友商事グループの風力発電所で発電した電力の一部を建物に供給しています。これにより、建物内の使用電力は実質再生可能エネルギー100%に。企業間PPAはまだ国内での実施事例が少ない取り組みですが、今回は両者のニーズがマッチしたことで今回の実現に至りました。
昨今、建物の使用エネルギーの種類については、テナント企業からの問い合わせも多いと言います。再生可能エネルギーの活用が広がる中、この試みも商業施設の先駆事例となるでしょう。
サステナビリティへの思いは、施設に入るショップにも見られます。2階の「タリーズコーヒー&TEA nonowa国立SOUTH店」は、国立の桜の木を市内の木工グループで加工した照明ペンダントを使用。カウンターには多摩産材、椅子の張地には廃棄食材で染めたファブリックを活用し、環境と地域に寄り添う店舗づくりになっています。全国展開するチェーン店も、国立らしさを意識した店舗づくりで地域のお客さまをお迎えする。ここにしかないくらしへの共感が、「nonowa国立SOUTH」としての一体感を生み出しています。
一貫して国立らしさとサステナビリティにこだわって建設された「nonowa国立SOUTH」。地域に寄り添っていくために、こうした考えや姿勢を地域の方々に知ってもらうための工夫もしてきました。開発計画の段階では、国立市の街づくり条例に基づき住民への説明会を実施。その後も小まめにリリースを発信して開発や建設の経過を伝えたほか、工事中の仮囲いにアートを描いて通りがかる人の目を楽しませたり、木造構造や木材使用箇所を説明するボードを作成してサステナビリティへの取り組みを伝えたり……。こうした取り組みはすべて、国立の街に受け入れられる商業施設をつくりたいという、担当者たちの強い気持ちから生まれたものです。
環境に貢献できているか、地域の暮らしと調和しているか。その効果や真価がわかるのは、おそらくこの先10年、20年が経ってから。国立駅の新たなシンボルとして愛され続けるよう、今後も先駆的なサステナブル商業施設としての成長を目指していきます。
COMMENT 担当者より
私たちのビジョンと思いが形になりました
「最初の計画から数えれば足掛け8年、たくさんの苦労がありました。最終的には国立在住のデザイナーさんとも協業することができ、意義のあるチャレンジだったと思います。今後はそれを運営側に引き継いで、SOUTHだけでなく国立全体でサステナビリティへの意識を高めていきたいです」(渡辺)
「小さな建物ですが、本当にたくさんのこだわりが詰まっています。国立は古くから愛され続ける建物が多い街なので、nonowa国立SOUTHもこの先そうなって欲しいですね」(將堂)
「『ここにしかないくらしをつくる』を掲げる会社として、私たちが目指すものを具体的な形として見せることができました。地域と一緒になって一から創りあげたサスティナブルな当社を象徴する建物になったと思っています」(森)
タウンプロモーション部 渡辺、將堂、経営企画部 森